ASPARAGUS presents BKTS TOUR 2007にBLの匂いを嗅ぐ

ASPARAGUSの企画「BKTS TOUR」(バコツツアー。http://www.3p3b.co.jp/bkts2007.html)は、アスパラガスと親交がふかいバンドが集まった。面子は前回の一昨年とほぼ一緒。LOSTAGECOMEBACK MY DAUGHTERS、そしてthe band apartの4バンド。今日はステージ袖で中尾憲太郎もステージを見ていたが、前回出演していた中尾のSLOTH LOVE CHUNKSだけが欠場した。なんらかの理由があるらしく、渡邊に呼ばれた中尾は客に詫びていた。

ツアーは大阪名古屋をまわっての東京だが、カラオケをみんなでやったり、バンアパのベースの原が、アスパラの三人とアスパラが所属する3p3bの曽根社長に、有名なバンドのロゴを手で描き入れたTシャツをプレゼントしたとか(一瀬と渡邊は来ていた。渡邊がポリスで曽根社長がレッドツェッペリン)、とにかくこの渡邉忍を中心とするバンド仲間たちは、度を超した友情の匂いをまとわりつかせている。渡邊のMCを聴いていれば判るが、特に渡邊が男同士の友情というものを大切にしているというか、友情の世界にどっぷりと浸かって生きているのだ。そこには女性を排除するような、濃厚で甘い男くささがある。この日のライブも通常のアスパラのそれと同じく、6:4くらいで女子が多かったが、彼女たちは演奏に惚れ込みつつも、同時に渡邊が醸成する男の友情の世界、カッコ良い男たちが子供みたいに友達同士ではしゃぎ廻っているような、BL的な要素に惚れている部分も絶対にあると思う。今回はほかの3バンドが<巻き巻きマッキーで>演奏したために、アスパラのMCが多くなったが、渡邊が仲のいいバンド仲間たちと過ごす時間を大切に思っていることがよく伝わってきた。加入して半年になるが、まだあまりステージの上でパッとしてない原直央に、執拗にクマのプーさんに登場する「ティガー」の物まねをすることを要求し、それに原も応え、メンバーが腹をかかえて笑うというシーンもあった。

それで甘美な友情が組み上げる鉄壁の演奏と至高のメロディセンスが解け合って、アスパラガスの演奏は今日もすばらしかった。渡邊はエレキギター、アコギを曲によって持ち替えつつ、Approach me、By my side、Far away、10月10日発売のアルバムに入るだろう新曲や、With the wind、Dead songなどを長く愉しいMCを挟みつつ矢継ぎ早に繰り出した。

特にすばらしかったのは本編ラスト3曲。アスパラガスの最新型と原点の名曲が入り交じってキラキラと輝いた。まず、このツアーから通販と手売り限定で発売された500円均一シングルの曲「HONESTY」(渡邊はこの商法を照れくさいのか自嘲気味にいつも語るが、「YES/NO」に続き、流通に乗せているものと何ら遜色ないクォリティ。物販は開演後、終演後、長蛇の列。ただしケースとメディアだけで歌詞はメディアにプリントされていて、ジャケットすらない。そのくせ盤面の色ちがいが6種類くらいあるそう)、畑違い気味ではあるが親密な関係を築いているピッツァオブデスのコンピに提供したPrecious、それでFallin' down。アンコールには出演した全バンドを呼びだして2曲(Just go onとあと何だっけ)やって終わり。おそらく打ち上げはこの晩も、大変なものだったろう。おれは昨年放送されたCX「FACTORY」で渡邉忍が司会者に語ったことばを思い出す。

自分に一番ちかい人が良いと思ってもらえるものを作りたいし、それで愉しくやれたら、もうオッケーかなと。

ちなみに終演後、人がいなくなってから並ぼうと、30分ちかく会場で待って、ようやく列の先頭に来たらシルクスクリーンのイベント限定ポスターは売り切れ(渡邊のすぐ無くなっちゃうから買わなくてもいいよ、という駆け引き的なMCが笑えた)。非常に洒脱なイラスト、デザインだったので残念だ。外を出たら、O-EASTとWESTとNEST(とCrestと7th floor)とasiaと、あとよく判らないクラブ(WOMBも裏にある)などに挟まれた通りには、「渋谷ジャック」(という渋谷のライブハウス、クラブが横につながったイベントが今日、渋谷各所で行われていたのだ。開けたら音が出るウェブサイト→http://shibuyajack.jp/)関係者と思われるB-BOY(って今でも言うのか)がいたり、アスパラファンの男女が着替えしていたり、そうかと思ったらネストから出てきたと思しき54-71のボボが友人と喋っていたり、音楽という共通点はあるけれどもまるきり異民族な風情の人々がみな笑顔で路上に立ったり座ったりしているのに出くわした。その雑然としたポリフォニックな(?)風景におれはシビれた。おれは渋谷で鳴るすべての音楽を愛してはいないけれど、こうした雑然と汚らしくも映る、渋谷の、この円山町の一画が好きだ。