文字数がおさまらんのでTwitter文体でブログに書かれた日記


昨日は宿酔い持て余しつつ宅で録りためた『サマーウォーズ』、『マッチポイント』見る。『サマー』は確かに衛星みたいのが家に落ちてくるのはヘンなのだが、家族が一致団結するシチュエーションに力づくで感動させられてしまうのは初見時とおなじ。『マッチポイント』はアレン的なくさみが薄くて(もちろんそのくさみは嫌いではない)びっくりしつつ夢中で見る。

夜はクアトロでPhewのカバーアルバム『five finger discount(万引き)』レコ発ライブ。ステージ上7人の演者のうち、3人が山本という異常な山本率の高さ(精一、久士、達久)。PhewMOSTのパンクボーカリストとしての姿しか知らないので、芯が一本通っていて熱いのに、どこか心ここにあらずな歌唱に、富岡妙子『物語のようにふるさとは遠い』(http://www.youtube.com/watch?v=NiX9JFdikZw)をなぜか想起す。そして両者の作品で重要な位置に立つのが坂本龍一Phewは「thatness and thereness」をカバーしている。坂本の作品中、最も実験性の高い作品のひとつ『B-2UNIT』に収録されたこの曲は、学生運動の騒乱を材にしているが、不穏なくらいにとても穏やかで、高校時代当事者としてまぢかで見ていたはずなのに、どこから遠くから、ミュートにしてコマ落としで見ているように坂本が歌う。生々しい現実感が、いったんキュビズムの絵みたいなフィルターにかけられて、距離感をもって伝わってくる。原曲の異物感をもった音の幾何学的配置を、使用楽器はちがうのに、うまく再解釈していて引きつけられる。ドラムの山本さん、リードギターの山本さん、ベースだがこの曲ではノイズ発生機械担当のオルークさんが、無秩序に見えてきちんと統御されたルールに乗ってインプロをやるが、それらが一斉に乗っかってくる中盤以後にカタルシスがある。石橋さんの抑制された無機的ピアノもばっちり。この楽団は妖怪の集まりみたいだ!

会場はほどよい埋まり具合だったが、five finger discountレコ発ということで、おれの左右が録音機をたずさえたメンズで、片方の人は戦車みたいなごついやつに衛星からの信号を受信するような立派なマイクを構え、亀のように動かず、片方の人は小型を胸ポケットに入れるが、曲がおわるごとに録音状態を確認するので、きぜわしい動きや機械のオレンジ色の発光がとても五月蠅い。ライブにおけるfive finger discount行為はおれも経験があるし個人で楽しむならどんどんやればいいと思うが、ライブ中にそうしたワイルドボーイズたちを隣人として持ってしまった場合はまた別で、彼らの無言の存在感と緊張が伝播してきておれは2割増くらいで疲れたから終盤のフォークルの「青年は荒野をめざす」では体を激しく揺すって「竜の髭」で「豚角煮麺」を食べておとなしく帰った。

帰宅後新宿方面から愉しい誘いの連絡が入るも上述した理由とTVドラマ『モテキ』最終回があるので仰臥して動かず。『モテキ』最終回はほぼ原作とおなじ流れで、初めてマンガを片手に持ちながらテレビを見てみたら、マンガではフジの携帯がdocomoで、TVはiPhoneなのに今ごろ気付き、ドラマならではの、メールや携帯の着信音が醸す異常なリアリティを感得した(大竹伸朗Tシャツとかもウワッとくるリアリティ)。終わり方だけマンガとちがったオリジナル、ということだったが、三人の女性とそれぞれに別れたあとに、自分のモテキが彼女たちに好かれて始まったように、これからは自分が誰かのモテキにならなければならない、と内的独白のなかで決意する、という地味な終わり方。マンガではフェスに乗り込んでいって土井亜紀に声をかけるところで終わり、その先がどちらに転んだのか、判らないようにしてあり、いろいろ議論もできるし賑やかな感じもある。

大根仁がドラマを地味に終えた理由は分からない。フェスの画を撮るのが困難だったからだろうか。それならeastern youthのライブ会場に乗り込む流れでもよかったはずだから、何か考えがありそうだ。ただどちらも、30歳の定職のないサブカル男子が恋愛の勝者になるためには、周りから出会いが転がってくるのを待つのでなく、自分の力で活路を拓いていかなければいけないというメッセージは強固に共通している。マンガ、ドラマを通じて、良い勉強させてもらいました(つぎは実践だ)。

それで翌日これを書いていたら中森明夫ツイッターに登場し、デビュー早々、坂本龍一と加護亜衣を結びつけるという離れ業でもって、フィクサーぶりを発揮していてニヤニヤした(フィクサー行為、なのに公開されている、というのが面白い)。中森氏がついにネットに、というのも感慨深いが、すべてが可視化されて弾丸のようなスピードでやりとりが交わされ、機智とアイデアがいちばん物をいうツイッターでデビュー、というのがいかにも氏らしいではないか。