rtと抱擁家族、ミッションズ4周年記念企画に出演し、しばらく活動をオヤスミする


日記は書いていた。今から10年以上昔のことである。しっかりした足取りで、毎日毎日書きつがれていったけれど、次第にそのストライドには元気がなくなり、ぽつりぽつり続いていく足跡、砂浜の上の頼りないフットスタンプみたいで、やがて注意していないと見逃してしまうくらい、足の裏のやたら小さな巨人が大またで歩いたみたいに断続的になって、あるとき、予告もなしに、消えた。

五年後、十年後の自分が、今日という日を振り返り、思い出し、吟味反芻する術が無い。自分がいちばん大好きで、自分のいちばんのファンが自分であり、その一挙手一投足に自分自身が熱い視線を送っていた。自分がたえず自分の行動を、思考の流れを閲して無条件に肯定する、そういう状態を自意識過剰というのでしょう。そういう時は誰にでもある。そういう時がいつまで続くか、学校を出て社会に入り込んでそれを喪失してしまうのか、その暑苦しいくらいにたぎりまくったエネルギーを、ずっと失わないのか。あるいは燃え尽きないものを自分のなかに飼いならしながら、社会との接点を探っていくのか。

自分は前ほど自分をあまり大切に思っていないような気もする。そういう話を人としたことはないが、多分みんな、そういうものだろう。時間の流れも次第に速く感じられるし。しかし、ふとした時に自分はやっぱり自分だな、と自分のファンになる瞬間もある。五年後、十年後の自分が今日という日を振り返り、思い出し、吟味反芻する術は無い。昔ほど自分は、自分の思考の流れや、一挙手一投足に関心を持っていない。だいたい日記も書かなくなってしまった。五年後、十年後の自分のために書いておこうか? 今日はイスで寝て起きたから腰が痛くて、二日酔いで、これから髪を切りに行ってから、バンドの練習に行く。当分この先の練習はないだろう。このところ移動中はツイッターに夢中で、いまは坂口恭平の誇大妄想的情熱にあふれた(原発の沈静化について最も悲観的な展開を予想することは大切だと思う。自分らは何を根拠に逃げないでいるのか?何度も裏切られた今後の収束プランを根拠に?周りの人間が表面的には平静にしているのを見て?確たる根拠は何にも無いのだ。だからそれを誇大妄想的と呼ぶのは本来ではオカシイ。しかし釈迦力で八面六臂な坂口さんの行動のリポートを読むと、そう名づけたくて仕方なくなる!)熊本での新政府発足の動きと、老獪な町山智浩の試合運びで引き起こされた日垣隆メルトダウン状態を固唾を呑んで注視している状態。読んだ本や遣ったお金はしっかり記録を付けているからそれでいいか。

そういうことでもいいんだけど、そういうことではないことを記録したい。自分が思っていること、死んでいくまでの自分の道の途上で、いまをどう位置づけているのか、いまにどんな意味がある?焦っていること、やらなきゃいけないこと。走っているのか?走れていないのか?慣らし運転か? ごまかしてるのかそうでもないのか。あるいは、会いたい人たちや疎遠になった人たちの、バイオグラフィ作者の目になって後から振り返るのでなく、いま現在におけるイメージ。もっと簡単にいえば、きょう時点、一番好きな小説家や音楽家、きょう、一番見てみたいライブバンド(アスパラガスやZAZEN BOYSや吾妻さんは何べんでも見たい。話題になっている撃鉄、チッツ、HOSOMEがいっぺん見てみたい)、好きなグラビアアイドル(吉木ちゃんを追っかけていればいいから、だいぶ雑誌を漁らなくてよくなった)、かならず見るテレビ番組(相変わらずMXのじゃりんこチエと、ゴッドタンがあればだいたいOK)。

エヴァーノートやソーシャルメディアじゃ記録できない、そんな話を、あとから振り返るために、バンドをやっているのかもしれません。Captain Hedge Hogの2002年の解散ライブで、渡邊忍がギター一本でやった「My Own Way」を聴いてたら、そんな甘っちょろいことばかり書いていた!

ryuto taonと抱擁家族http://www.myspace.com/hoyokazoku)の次回ライブが決定した。2009年6月に初めてご縁をいただいてから、5回やらせていただいた高円寺クラブミッションズが4周年を迎えた。それを祝って11日間に亘って行われる、記念イベントのひとつに呼んでいただいた!(http://www.live-missions.com/schedule/anniversary.html) 2009年6月以後、わたしどもの活動は、ほとんどクラブミッションズで行われてきた。しばらく休んだり、狂ったようにやったりという頻度の変化はあったけれど、いつもいつも、ミッションズの次のライブのために汗をかき脳みそをこき使いながら練習をしてきた。人間、内的衝動だけではだめで、目標や締め切りがあってこその創作なのだ。物好きにもぼくらを評価して、面白がってくれた音楽で生活している人との出会いは、当時のわたしらには大変感動的な出来事だったし、それは今も変わってない。

2011年05月24日(火) ■高円寺Mission's The 4th Anniversary■

MANDOG/日比谷カタン/ryuto taonと抱擁家族/URiTA/やまのいゆずる

開場 TBA
開演 18:00
DOOR \2000

このライブから先、しばらく予定は白紙。ryuto taonはインド料理屋を二軒掛け持ちで働いていて目がまわる忙しさだし、将来はインドで日本語の先生をやるかもしれない、というような告白を、先日いきなりしてきておれは面食らったりもした。原発以後、創作への情熱とモチベーションも、なかなか維持するのが難しくなってきているという。おれも彼の用意してくる曲を頼みに、即興で言葉を載せていきながら、曲の輪郭を確定させていくから、一人では力が出せない。そしてこっちにも確かに、活動すること自体が自己目的化しているフシはある。枯れない泉のような、強度のある言葉の噴出と、それの源となる掘り下げていくべきテーマの確保も、ちょっと大人しくなってきている感じもある。これはちょっと、深刻な話。やっぱりバンド活動というのは、スタジオ練習でのあの目ン玉飛び出すような面白さがないと! こないだのF.A.D横浜でのアスパラガスのワンマンライブでも、しのっぴが言っていたよね、いくつになっても、スタジオがいちばん楽しいって(あれ、ライブの次に、だったかな?)。

だから今度のライブは今までいちばん良いものにしないといけない。しかも歌詞の構築力と独自性、そしてひらかれた面白さ、さらにパフォーマンスのユニークさでは他の追随を許さない、日比谷カタンさんとの対バンだ(スケジュールにわたしどもの名前が! http://katanhiviya.com/schedule.html)。縁のあるところで、自分が尊敬する人も出るというのは、まるで若いバンドマンを主人公にした、ビルドゥングスロマン形式のマンガみたいな話じゃない? 24日火曜日なので、3日後なのですが、どうかよろしくお願いします。わたしどもの出演は一発目、18時からです。早いですが、他で見られない演奏を行います。