ライジングサンはことしで十年目

breaststroking2008-06-22


この夏は2年ぶりにライジングサンロックフェスティバルに行くことに決めた。場外では興行会社のウェスと「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」の渋谷陽一との冷戦が話題になっているが、競合を避けてバンドブッキングをしているとは思えないほど(といってもこの二つのフェスは持ってるカラーがだいぶちがうから、あんまり不思議ではないけど)、10年目ということでラインナップがとっても豪華。

http://rsr.wess.co.jp/2008/index.html

V∞REDOMSASPARAGUSZAZEN BOYSROVOゆらゆら帝国、銀杏、電気、ビークルと、これ以上が望めないくらい、自分にとって魅力的なラインナップだ。欲張れば吾妻光良 & The Swinging Boppersとか(吾妻さんはこんど野音で見るけど)CorneliusとかHASYMOとかが入ってたら言うことないが、逆に言えばそれくらいおれにとって瑕疵がない。みなさんも行きましょう。飛行機とらなきゃ。

会場に100人いないイベントが面白い

今日は雨ン中、歌舞伎町のはずれ、新宿シアター・ミラクルで「シベリア少女鉄道の再放送」へ。ライブハウスのMOTIONが入っている雑居ビルのなかにわりと広い上映スペースがある。過去のお芝居4作(第4回公演「栄冠は君に輝く」、第11回「VR」、第16回「残酷な神が支配する」、第17回「永遠かもしれない」)のビデオ上映会だ。

http://www.siberia.jp/nextstage.html

シベリア少女鉄道が、というか主宰の土屋亮一さん(http://siberia.eplus2.jp/)が損しているのは、「シベ少のすごさはとっても伝わりづらい」ということだというのはファン各位には異論がないかと思います。毎回荒唐無稽な仕掛けに命をかけているからネタばれ厳禁ですごさが伝わりにくいし、土屋さんが親しんだ芸能界やテレビ番組、ゲームなどの娯楽が劇中の重要なネタの部分にサンプリングされまくっているから、電波メディアに乗せることができない(でもフジテレビの期間限定の芝居小屋に出たり、こないだもフジのある長寿番組をネタにしたとても短い作品を、深夜番組に提供したりもしていたけれど)。電波に乗せることができないということのみにおいてはポツドールなんかも似たところはあるけれど、ネタばれせずにストーリーだけ紹介しても無味乾燥で何にもならないのは小劇場の劇団としては致命的ではないか。思うような口コミが見込めないわけだから。

なんか妙に熱くなってしまったが、この「再放送」、金曜も来ているのできょうで二回目。5年前の大塚ジェルスホールでの上映会よりもずっと人が多くて混んでるけれど、あのときあった、土屋さんと俳優による副音声とか、上映会なのに一部リアルな演技・演出があるとかいったシベ少らしい趣向がなく、ほんとにただの上映会でそこは残念。しかも金曜の「残酷な神が支配する」もきょうの「永遠かもしれない」も、ともに劇場できちんと見ているやつだった。おれボケちゃったのかな?、仕事中朦朧としながら予約したから気が付かなかったのだと思うが、上映が始まるなり「あ、やっちゃった」と気づく瞬間のむなしさは、古本や雑誌やDVDをダブり買いして、家に帰って気づいたときのむなしさを完全に一致。あと「残酷」は仕掛けが起きるまでが長く退屈で、「永遠」のほうは仕掛けはすぐ起こるものの、全体がむちゃ長い(加えて、あまりに感動して劇場で二度見たから細部までだいたい記憶していた)。ちょっときつかった。会場は80〜100人くらいか、両方とも満員。会場の後ろ、PA卓みたいなところで土屋さんが座っていて、客席から笑いが起こるとにやにやしていた。

見終わってメシ喰って山手線で恵比寿へ。ちょっと奥まったところにあるsiteという地下のギャラリーで、舞踏家のホナガヨウコの音体パフォーマンス「たたきのめすように見るんだね君は」。

http://www.honagayoko.com/Hona/news.html

ホナガは1981年生まれのダンサーで、早大の当時の第一文学部出身。昨年墨田区で行われたにせんねんもんだいとの音体パフォーマンスで初めて見た。音体パフォーマンスというのはホナガが編み出した公演形態で、バンドの生演奏とダンスが同じ空間でコラボするのである。今回はチェルフィッチュのお芝居での楽曲提供が印象的だったサンガツが「音」を担当する。ギャラリーは15m×18mぐらいだったのかな、狭くも広くもなく、壁床天井一面白くって、左にサンガツ、あとのスペースをホナガが動き回る走り回る。PAなんかない。サンガツのアンプから流れる音が、音響設計を考慮していない空間にひびき渡る。こういう変わった場所で行われるライブは本当に面白い。2週間前の、渋谷ギャラリー・ル・デコでのにせんねんもんだいの「にせんねんカフェ」も会場のたたずまい、雰囲気に得がたいものを感じたが(にせんねんもんだいは、1ヶ月前の六本木ヒルズでの野外フリーライブもとっても良かった)、静謐でキョウザツ物の一切ない空間でのパフォーマンスは、息をのむような独特な美しさがある。

にせんねんの時は表現の主従関係が拮抗していたが、こんどのはサンガツがホナガにやさしく寄り添っている感じだった。ちょうど兄妹のように。演奏は、コーネリアスの『POINT』っぽい、ホナガの動きにこまかく同期した抽象的なものもあれば、バンド史上最高にロックなインストナンバーもありでなかなか芸がこまかい。そうそう、書き忘れてたがサンガツは今回、2ギター、シンプルなセットのドラムの3人編成だった。例によってストーリーはあるようなないような感じなのだが、前回のテーマが「こどもの天使っぽさと乱暴さ」だったような気がするのに対してこんどのは「若い女の子の不安定さとそれを乗り越えた先の成長」というようなものだった気がする。で何が言いたいかというとYAB-YUMのコスチュームを2度くらい着替えながら、終始一人踊り続けたホナガの時おり浮かべる満面の笑顔や、すとんとした体つきやときおり繰り出す魔法使いか魔法少女のような振りにおれはキュンとなった。演奏にあわせてきれいな声で唄う終盤のシーンもよかった。物販で見て知ったが彼女はピアノのCDも自主制作している。

本編はちょうど50分くらい。観客は50人くらいで完売。外国の人も多くいた。物販には佐々木敦。いつでもどこでも佐々木敦