エヴァ雑感

池袋シネマサンシャインで「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」をレイトショーで。日曜の21時スタートなのに立ち見が出ていた。みなさんはどうご覧になった? おれは終始、胸がときめきッ放しだった。懐かしさ(12年も経つのカ?!)とかじゃなくて、自分がかつて夢中になったものが、いまも文句の付けようもなく完全にカッコよくて面白いものだったから(以下ネタバレします)。

今回のシリーズはたぶん、あり得たかもしれないもう一つのエヴァンゲリオンを創造する試みではなく、締め切りに追いまくられて坂道を転げ落ちるようなスピードで急造されたテレビ版エヴァンゲリオンを、理想の姿に補強し、磨き上げていく試みなのだろう(あとでウェブを見たら、つぎの「破」から、テレビ版とは異なるパラレルワールドに入り込んでいくことを知った)。2時間でテンポよく、テレビ版第6話の、使徒ラミエルを「ヤシマ作戦」でやっつけるところまでが展開する。新規に追加された映像もおれには違和感がなかった。やたら葛城ミサトの家にUCC缶コーヒーが転がっているのが気になったくらいだ働きマンが作っている雑誌『JIDAI』も転がっていましたね)

謎の読み解き、緻密な設定、キャラ萌えなど、この作品には魅力が数多くあるが、今回のリビルド第一弾「序」はまず、エヴァの序盤を、「眼と耳をよろこばす活劇」として捉えなおす試みだとおれは思った(キャラ萌えの範囲に入るが、おっぱいの追加もふくめ)。記憶をたどりながら見ていて驚いたのは、こんなに戦闘シーンが刺激的で豊かだったっけ?ってことだった。つぎつぎに襲来する使徒三体との戦闘が「序」の見せ場だが、手に汗握る、興奮する! 使徒の形状や動きの気持ち悪さが、元は監督の頭ではこのようにイメージされていたのだなと思うほど、テレビより数段高まっていてすばらしい。ひたすら甘美な戦闘シーンだった。

同時に、話自体が全く古びていないことに感心した。シンジのアイデンティティクライシスがより丁寧に描かれているような??、そこはテレビと同じか? また、それまで身じろぎもしなかったのに、エンドロールがでた瞬間、ザワッと会場全体が騒ぎ始めたのは、本当にエヴァっぽいなあと嬉しくなった。また見たい。エンドロールの後の予告も微笑ましい。前回十年前の劇場版とちがって、物々しい感じじゃなくて、客観的に、気軽に見られるようになっていて、それもまた嬉しい。

ちなみにその晩深夜、TBSラジオにてこの作品を宮台真司竹熊健太郎が語り倒すという意欲的な特番「エヴァンゲリヲン新劇場版公開記念 深夜の緊急対談(放送休止の枠をつかって、25:40〜28:00の長い特番)が放送されていた。宮台さんの、たとえば、エヴァ<95年という時代の異常さとシンクロしていた>というような言葉や、人類補完計画をクラークの『幼年期の終わり』と比較して手際よく概説していく言葉の一つ一つが、いちいちおれの記憶中枢を刺激した。21世紀に入って瀕死状態になった日本のサブカルチャーがこのごろまた、労働問題やDIYなどの抵抗文化と結びついて息を吹き返しているようにおれは感じている。聞きながら就眠。