まがじなりあ・あちらこちら9 隠れた文章家・砂十島NANIが記録するこの夏の大阪の変貌

http://blog.goo.ne.jp/nani_satozima/

ZUINOSINを初めて見たときの衝撃はすさまじかった。一発でおれは追っかけになってしまった。たかだか二、三年前くらいのことだけど。三人の妖怪のような衣装やもろもろのデザインセンス、変拍子でパンキッシュな聴いたこともないような曲調、魅かれた要素はたくさんあるけれど、ヘッドセットに向けて高い声で歌い叫び、呪文のようなものを唱えながら、壮絶にドラムを乱打する、頭にはスカーフみたいのを巻いた砂十島NANI(さとしまなに)の存在感がいちばんにグッときた。おれにとって大阪のインディーシーンの変態性とエネルギーを象徴する存在が砂十島NANIだった。無駄なく筋肉が付いた長身と何を考えているのか伺えない剣呑な表情。破壊衝動、演奏技術、独創的アイディア、そして愛嬌! これが関西インディーだ、とおれは夢中になった。

http://smashingmag.com/int/int05/050710zuinosin_tod0.html
http://smashingmag.com/tour/05tr/050909zuinosin_tod.html

しかしながらズイノシンは何やら複雑な事情で活動を休止。一瞬で伝説になってしまったがNANIは過去を振り返らずBOGULTAとnanycal Zを結成、それだけでは飽き足らず、野獣-NOKEMONO-(http://nokemono.good-space.jp/)、AMAZON SALIVAhttp://www.amazonsaliva.com/)といったバンドにも加わり、本人も「ツアー難民」というくらい、憑かれたように西日本を中心に全国を走り回っている。私見だがAMAZON SALIVAはタバタ(Boredoms、ゼニゲバ)、hide(ウルトラビデ)といった関西パンクシーンの重鎮(妖怪?)二名とのスリーピースであり、この人の器のデカさを改めて感じさせる。

なのでおれのNANIのイメージは、武骨でマシーンのようにストイックなミュージシャンという感じだった。だから『indies issue』(ビスケット)での連載「R70指定 自動ドアだよ人生は」で、ナニが文章家であることを知っておれはびっくりした。10回目となる今月の文章を転載する。

今年の夏はいろいろあった……。まず我々が、スタジオに、ライブに、ミーティングに、撮影に、待ち合わせにと、フルに使っていたフェスティバルゲート8Fにあるライブスペース「BRIDGE」が閉鎖してしまった。BRIDGEだけではない。大阪の本当に素敵で、素晴らしいスペースがことごとく無くなっていくのはのはやっぱり悲しい。大正DISCO BEANS、味園ビルにあったどCORE(ママ)や鶴の間、香港にマカオ、それぞれが新しい場所、または同じ場所で名前を変えてまだまだおもしろいことをやり続けていたりするけれど、やっぱり自由に遊べるスペースというのは貴重で、変えがたい何かがあるものです。

ブリッジは訪れたことは無いけれど、五年後、十年後、回顧される空間になることだろう。東京でおれは毎月スケジュール表を見ながら、そこで連日行われる刺激的な企画の連なりに歯噛みをしていた。ライブ写真を撮る若い写真家K?No:2さんが、エンディングへ向けて突っ走る新世界BRIDGEのたたずまいを活き活きと記録しているので、最後にご覧ください。
http://eoeoeoe.exblog.jp/6473983/


#一つ書き忘れていた。ボガルタは12月8日、神戸にてTha Blue Herbとのツーマンライブを行う。札幌と大阪という異なった都市を拠点とする二つのユニットは、依拠している音楽ジャンルもまったく違うけれど、巨大な火の玉みたいにアツくて激しい勢いで音楽シーンを活性化させている点で共通している。まちがいなく歴史的な企画になるだろう。