わがよき坑夫

大友良英の単行本、栗原裕一郎『盗作の文学史』、「偽日記」の古谷利裕『世界へと滲み出す脳』など、今月は面白そうな新刊が軒並み2000円越えなので戦々恐々として本屋まわりす。そんななか新潮文庫「おとなの時間」シリーズとして新装した漱石『坑夫』はおれによって思い出深い漱石本ということもあり、おれ、その腰巻きに載った文章に軽いめまいをおぼえる。

100年前、すでに漱石が残していた
生々しワーキングプアの惨劇!
働けば働くほど苦しい

『坑夫』ってそんな話だったっけか?? 『蟹工船 党生活者』で味を占めたか、古典をワープア文学として読み直していって順次ムリムリ腰巻き付け替えていったら、そこはスターリニズム下の翼賛文学マーケットみたいになって、ひろがるその平積み台の景観、書店と書肆が喜んで、読者はげんなりするものとなるであろう。