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2013年、わたしの最良の書籍10冊、そして通読できたらきっと最良だった10冊

テスト。 絶望 (光文社古典新訳文庫)作者: ウラジーミルナボコフ,貝澤哉出版社/メーカー: 光文社発売日: 2013/10/08メディア: 文庫この商品を含むブログ (13件) を見るももクロ★オールスターズ2012アーティスト: ももいろクローバーZ出版社/メーカー: …

 告知とは人生なのか?

吉田豪の『サブカルスーパースター鬱伝』(徳間書店)は冒頭のリリー・フランキーのインタビューからシビれた。この本は、サブカルで名を成した男性は、40前後で鬱になる。著者も、これからそこに差し掛かってくるので、先輩にエピソードを聞いて、原因と対…

本、如何なるほしい物リストに 9月21日

iPhoneアプリ「Item Shelf」で、買いたい新刊をメモしている。書店さん店頭でのその様は、詳らかには書かんけどほんと野暮天、無粋そのもので、都度自己嫌悪するけれども、購入したい本を星で優先順位をつけて上に表示してくれるのが便利で、頻々とつかって…

 グラビアアイドルという百魔6 グラドルとボディビルダー、『果てなき渇望』を参照しながら

ステージには、五列になって選手たちが並ぶ。 「デカイ!」 「もっと、その大きな胸を見せてくれ!」 「ナイスポーズです!」 「肩だ、肩! 肩をアピールしろ」 「キレてるぞ! 優勝間違いなしだ」 「第1章 コンテスト」増田晶文『果てなき渇望 ボディビルに…

 光文社古典新訳文庫 ナボコフ『カメラ・オブスクーラ』について事実誤認のおわび

前回、もう五カ月以上前になってしまうのですが、光文社古典新訳文庫でナボコフ『カメラ・オブスクーラ』が新訳で出て、ほんの触りを読むが早いか、ここで紹介した。id:breaststroking:20111101#p1そこで、この本は先行訳の存在についてまったく触れていない…

大衆決断の切り抜き帖3

西村賢太が描く北町貫多の物語は、このように様々な落差をちりばめることによって、読者を小説スパイラルの中に強引にひきずりこむのでした。 「おい、ぼく、明日岐阜に行ってくるからね」(「瘡瘢旅行」) という台詞における「おい」と「ぼく」の間の、歯…

ナボコフ『ローラのオリジナル』をめぐってメモ 1度書き加え版

ナボコフ生前最後の−不思議な言い方だが、あえてこんな風に書いてみたくなる−小説。中編程度の長さで構想されていたが、その死によって中絶された。故人の遺志により公刊されてこなかったが、偉大な父とその仕事を病的なほどに敬愛し、外部からの批判や著者…

久田将義『トラブルなう』(ミリオン出版、2011年)

『噂の真相』は2004年4月号をもって休刊した。今では年に何回も、好きだった雑誌の休刊のニュースに接しているから、いちいちにそう悲しい思いもしないが、この時は本当に寂しかった。休刊まえの何号かは、表紙で休刊までのカウントダウンをやっていたが、そ…

イベントについていろいろ考えを持っている。イベントとはどういうものか。人と人が集まって音楽をかけたり、酒を飲んだり、話をしたり、同じ方向を見たり、ばらばらな方へ視線をさまよわせたりする。ある人は浮かれ騒いでいるし、ある人は棒のように立って…

熊谷朋哉さんへの質問

熊谷さんはじめまして。かちゃくちゃと申します。写真集楽しく拝読させていただきました。写真のみならず、言葉を寄せた関係者の選出も、シビれるものがありました。まず前置きになりますが、ぼくがお訊きしたかったのは、『YMO×SUKITA』の造本そのもののこ…

堀江貴文と向井秀徳の自己変革

砂漠の朝を さまよって 無人島にたどりついたんだ ZAZEN BOYS「The Drifting / I Don't Wanna Be With You」 * 初めに断っておくが、僕が本書で定義する「オヤジ」とは、年齢的なものではない。あらゆること−家族との向き合い方や仕事への接し方、服装や体…

東京堂は世界一、あるいは高校野球の女子マネージャーがドラッカーを読んでどうこうなるという本を小説として不出来だし安易なマーケティング本だとして貶す書評家(永江朗氏)にキャリアの限界を感じるの巻(コミュニケーションをめぐる四題、に、書くはずだった文章)

文章は時々書いているが書き上がるところまでいかなくてほとんど携帯やパソコンのハードディスクに眠ってる(iPhoneを買って、Evernoteを使い始め、フリック入力に習熟してからは、外で書く能率が上がった)。このエントリでは、1月に書いたものを載せます。…

HALCALI『ENDLESS NIGHT』、夜の自然主義

あそこであの返しは正直ない 真夜中でピンの反省会 ツッコミ不在の自問自答 オチも返りもなくただ悶々 「やっぱ独りなんだ」と気づいたり 「いや繋がってるかも」と期待 行ったり 来たり 繰り返し きっと無駄じゃないが果てしない HALCALI「ENDLESS NIGHT」(…

二夜連続企画・コミュニケーションをめぐる四題・1

●会話、二つの世界の差をつめる 上田明子『話せる英語術』(岩波同時代ライブラリー、1995年)は、おととし読んだ。英文読解の練習にハマっていて頭がクラクラしているときに、箸休めの気持ちで読んだ。そうしたら冒頭の一文から、これは生なかの英会話本で…

2009年わたしの最良の書籍20+3冊

今年は、話題書や変化球を交互に行くような、派手な読書ではなかった。ただ、手が回っていなかったものを押さえる地固めのような読書は、通年でできた気がする。また、少し品がないけど、冊数でいうと、今年はこの5年間でいちばん読めた。以下の書名群は、例…

Have a nice trip with some books!

そんなにカネにはなっていないけれど、部署として会社から問題視はされていない。あるいは、社のブランドを上げ、日本の文化の一翼を担ってくれていれば、よっぽどの赤字をこかん限り、社としては文句は言わないよ!ってそういう状況にある中小出版社のセク…

夏の小谷野づくし

モダン・ホラーともいうべき山田太一の『異人たちとの夏』(新潮文庫)は、『牡丹灯籠』を現代化したものだが、これら全て、あるいは四代目鶴屋南北の『東海道四谷怪談』でも、恋あるいはそうしたものに敗れて死に、怨霊となるのは「女」である。これが東洋…

本を読んでいるとたまにある、忘れがたいあとがきの結びのところ、三つ

このようなむしろ論理的な細部の構築と、必然の線に沿った徹底的な磨き上げと、装飾的・敷衍的要素の排除とは、謙虚なチェーホフの晩年の世界へと私たちを導いてくれる。それは抒情でも諦めでも「明るい未来への確信」でもない、そのような言葉よりは遥かに…

まがじなりあ・あちらこちら15 佐藤友哉の小説は読めないが自己言及的な随筆は好きだ

新潮社『波』7月号より。 僕は今年で、作家生活八年目をむかえる。八年ものあいだ毎日小説を書いた結果、いろいろ成功して、いろいろ失敗して、思い出ができて、悔いが残って、大切なものができて、大切なものを失って、(中略)そして後輩作家ができた。こ…

ぼくたちの好きな冒頭14 J・G・バラード『ヴァーミリオン・サンズ』

一夏のあいだ、雲の彫刻師たちはヴァーミリオン・サンズからやってくると、ラグーン・ウエストへのハイウェイの横にならび立つ白いパゴダにも似た珊瑚塔の上を、彩られたグライダーで飛びまわった。中でもっとも高い塔がコーラルDであり、ここには砂礁脈から…

ヘンな文章が好きだ9 昆虫食研究家・内山昭一氏が放つポエジー

あれ、なんかおかしいな。以下に紹介する異色のレシピ本・内山昭一『楽しい昆虫料理』(2008、ビジネス社)は、先日ryuto taonの宅にあそびに行ったとき(id:breaststroking:20090504#p1)に借りてきたもので、手に取ったときは、カマキリの南蛮漬けだの、ハ…

ヘンな文章が好きだ8 / ナボコフ日記 revisited1 ナボコフ『プニン』メモ

今週末は日本ナボコフ協会(http://vnjapan.org/)の年次大会が外語大である。http://blogari.zaq.ne.jp/propara/article/10/前回参加した東京海洋大学での大会では、碩学ブライアン・ボイド夫妻からサインをいただけて嬉しかった。今回気になるものには、グ…

ヘンな日本語が好きだ おまけ•すばらしい食虫本の世界

→長くなったので日をあらためます。 始めよう。瞑想―15分でできるココロとアタマのストレッチ (光文社知恵の森文庫)posted with amazlet at 09.05.14宝彩 有菜 光文社 売り上げランキング: 1002Amazon.co.jp で詳細を見るスワミ・シヴァナンダの瞑想をきわめ…

ryuto taonが初心者におすすめする、スピリチュアルに暮らすための本たち

ここでは彼の本棚(もちろん手作りである)から、断腸の思いで5冊だけ、入門的良書をえらんでもらった。pop的リコメンデーションもそえてご紹介する。○シヴァナンダ•ヨーガ•ヴェーダーンタ•センター編著 菊水美佳訳『スワミ•シヴァナンダの瞑想をきわめる』…

きれぎれ文学考察7 ryuto taonといっしょに雑草を食べ、インタビューする

さいきんどうも、ryuto taonの様子がおかしい。ryuto taonというのは自分がやってるスピリチュアルダンスロックバンドryuto taonと抱擁家族(http://www.myspace.com/hoyokazoku)のトラックメイカーのことである。この男むかしから、瞑想をたしなんだり、と…

きれぎれ文学考察6 前田塁をつつむたくさんの守護霊、あるいは蔵の中の古い刀の話

文芸評論家・前田塁ことオルタナ系文芸編集者・市川真人の活動をおれは十年ちかく見つづけている。2001年1月から実務責任者となり、デザイン、書き手を新たにし、一気に『早稲田文学』を立て直した氏の仕事を、リニューアル直後の早稲田文学がおれの本棚にい…

きれぎれ文学考察5 サタミシュウ始末/覆面作家サタミシュウを「追い詰める」

このまえ(といってももう先月のことだ)、有楽町の三省堂書店、新刊コーナーを覗いていたら、サタミシュウフェアが展開されていた。新刊が刊行されたのだ(『はやくいって』角川文庫)。前フリしてからだいぶ経ってしまった。サタミシュウ解決篇を書いてお…

まがじなりあ・あちらこちら番外編 感傷的な散歩、あるいは雑誌、われ逝くもののごとく

やる仕事が劇的に変って、ネットもやってないし新聞もあんまり読まない暮らしになっちゃってる。よくないんだけど不便さはあまり、ない。だもんでジュンク堂で立ち読みしてたら、雑誌のフロアで『本の雑誌』(本の雑誌社)の一大フェアをやっていて、なにが…

2008年わたしの最良の書籍20冊

1994年から買った本、読んだ本のリストをつけている。リストには簡単な読後の評価もつけている。 そこで去年、高い評価を与えているもの20冊を選びだした。機械的に上位のものを抜き出して、なかで読んでいるときの高揚感が思い出せるものを残した。刊行年が…

ぼくたちの好きな冒頭13 / 三浦俊彦を読もう1 覆面作家サタミシュウを「追い詰めない」

中央研究室にいま、教官(傍点)たちのてんでに話す声とタバコの煙とが同じ濃度で充満していると仮定しよう。そう無理な仮定でもあるまい。中央研究室というからには、さしずめ研究科主任である安蛭武雄教授の研究室の通称であり、他の研究室のさしあたり一…