ゾクゾクと言えば、ちょっと前にjunさん(id:surround,http://web.sfc.keio.ac.jp/~t99778jf/index.html)が辻堂スプートニクhttp://web.sfc.keio.ac.jp/~t99778jf/cgi/pukiwiki.php?ImgUscpSputnik。この夏は行かずに終わりそうで残念だ)について書いたみぢかい文章も印象深かった。田中氏が織り上げたものを引用のアラベスクとするならば、junさんがおこなった一撃必殺的な草森紳一の引用は、毛糸玉一個から編み上げたセーターのようだ(←なんかうまいこと言おうとして失敗した。でもjunさんがこのところ橋本治について続けて書いていることを考慮に入れて、みのがしていただきたい)。

そこまで記憶を頼りに書いてから、引用するために文章を拾って来ようと思ってサイトを彷徨ったけれど、そんな文章はついに見つからなかったのだ。あれは夏のまぼろしか。茫然とするおれの頭の中を、健坊が「ケ、ケ、ケ、」と笑ひながらゆつくりと横切つた。

 そしてその翌日、札束と花束を用意してその晩の所と思われる辺りを根気よく探して廻っても、赤い軒灯が出ている家はとうとう見付からなかったそうである。


吉田健一「百鬼の会」
『絵空ごと・百鬼の会』講談社文芸文庫