愉楽百景、あるいはある日本語の系譜

「ところでだ、お前のチンポだが、ちゃんと剥けてるのか? 包茎手術とか、ここでやっといたほうがいいんじゃないか? 今なら無料だぞ。どうだ、一つやってみるか? 何なら、鼻とかも別にいらないんじゃないのか? 穴さえあれば足りるわけだからな。斬っちゃおうぜ、瞼とかもさ。瞼がないのはイカしてる、絶対にな。いつも目がかっと開いてて、ロボットみたいな感じだからな。SF的で、死ぬほどカッコイイぞ。鼻と瞼がないのは、何というかあれだ、ドクロっぽい。海賊的だよ。どうだ、いっちょやってみるか?」

「セックス、セックス、セックス」彼は自ら三拍子のリズムに乗った。
「エネールギヤ、ロスケ、いいぜ、この野郎、乳首噛み切るぞ、まんこ、ロスケのまんこ、露まん、ロマン主義

島田雅彦『亡命旅行者は叫び呟く』福武文庫

なにしろ、まだわたしの戦いは終わっていないからであって、何故ならば機械はまだ九分通りまでしか完成していないからであるが、同時に、もはや末吉幸吉氏が捜し求めつつあった偉大なる人工性器を待ち続けたわたしがまちがいであったことも明らかとなった以上、戦いの完結は、他ならぬわたし自身によって機械を完成させることによってのみ達成されるものと考えられる。自力で! マイ・ペニスによって!

後藤明生「ある戦いの記録」『何?』新潮社