彼は女の顔の上の花びらをとってやろうとしました。彼の手が女の顔にとどこうとした時に、何か変ったことが起ったように思われました。すると、彼の手の下には降りつもった花びらばかりで、女の姿は掻き消えてただ幾つかの花びらになってしまいました。……あとに花びらと、冷たい虚空がはりつめているばかりでした。
坂口安吾桜の森の満開の下」同題の講談社文芸文庫版より。初出は『肉体』創刊号(昭和22年)


http://www.sanspo.com/geino/top/gt200602/gt2006022402.html

MEGUMIの交際ニュースの件、その後人づてに聞いたことには、交際発覚の報せは、かちゃくちゃ氏の体調を配慮して、親族および関係者は事実を伝えない方針だという。

まるでトゥルーマンショーみたいだ、日常に出来したブンガクだと私は思った。なにをそんなニュースごときで大げさな、と顔をしかめる向きもあるだろうが、この件は氏の精神状態に意外に深刻なダメージを与えるのではないかと予想されるからだ。一つには氏のMEGUMIへの一方ならぬ思いがある。MEGUMIが少年誌や青年氏のグラビアを飾らなくなった現在でも氏は、たとえばKISHIN SHINOYAMAプロデュースの「digi+KISHIN DVD MEGUMI」をチャンスがあれば手に入れたいと考えているし、木村拓哉とのアドリブの応酬が生々しいウィダーインゼリーのテレビCMを、機会があればハードディスクに収めておきたいと考えている。

次に、これは氏の考えというよりも一般論、実を言えば私見に過ぎないが、巨乳グラビアアイドルの「お泊りデート」交際が発覚すると、その人が非巨乳グラビアアイドルであった場合よりも相当口惜しい気分になり、落ち込むのはなぜだろう。それはまちがいなく深夜、都内マンションで対手の男性がナオンのブツを揉んでる図像が容易に想像されるからだろうね、ということをこの場を借りて言いたい。それが証拠に、瀬戸早妃西川貴教の交際がいかに声高に報じられよう(http://www.sanspo.com/geino/top/gt200602/gt2006022402.html)と我々はいまひとつリアクションを取りづらいが、かりにこれが相澤仁美や下村真里あらためMARIだったら一見して卒倒しているだろうからね。別におれはMARIの熱心なファンではないけれど。グラビアはちょこちょこ切り抜いているけれど。巨乳に関するニュースはもっと慎重に扱われるべきものなのだ。関係ないけれど、MEGUMIの今回のニュースの下に、ちょこっと同じ事務所である瀬戸のじん帯損傷のニュースが並べられている事実は、グラビア文化史的にわりとコクがある話なのでメモ程度に書いておこう。

最後に、相手が悪かった。これが小劇場の役者やらお笑い芸人だったらまだ良かった。しかしグラビア愛好家にとって人気アーティスト、それもヒップホップ、ミクスチャー畑の人というのは座標上最も遠い位置、極北に分布する人種である。おれらのホームグラウンドである青年誌の巻頭グラビアでポーズを決め、笑顔を浮かべ続けたMEGUMIは、我々がボヤボヤしているうちに二度と戻らぬ世界に出て行ったのである(一部語気が荒くなったが、私はかちゃくちゃ氏ではない)

このニュースは、氏のような労働の奴隷にでもなれば、外の情報を手に入れることが相当ハードになるだろうし、第一、どうでも良くなってしまうのかもしれない。私はMEGUMIの交際をきっかけに出来したこのかちゃくちゃ氏をめぐる情報隔離というべき事態を、不謹慎かもしれないが興味深く思った。

…と思ったら、コンビニ雑誌ジャンキーの氏にそんなことは隠しおおせるはずもなく、一両日中に交際発覚が伝えられるということをさっきどっかどうでもいいところから聞いた。やっぱそうだよな。

最後に、単なる思い付きだが、イエローキャブから芸能界に接近したほぼ同世代の人に小池栄子佐藤江梨子がいるけれど、MEGUMIは一生をかけて、一般タレントの地位を掴まえることができたんだろうか。かつてM野さんとそんなことを雑談した記憶があるが、MEGUMIが自身の芸能キャリアをどう捉え、総括したかが気になってる。MEGUMIは正当派女性タレントの姿かたちを知りながら、ついにそこまで到達できなかったと思っているんじゃないか。そんな甚だ無礼な仮説を持っているからだ。初心に帰って『デート』(秋田書店)『Megami』(学究研究社)『Meg』(アクアハウス)は今夜にでも読み返したい。