ヴァラエティ・ショウ、あるいはタイムテーブルにお願い(何を!? 人生を!)

いまCX「チンパンニュースチャンネル」を見ていたら、今週のゲストはドラマ「東京タワー」のPRということで広末涼子で、風邪ひいてるのか声がガラガラだこれは酷い、なんて弛緩した脳味噌で見るともなく見ていたが、MCのチンパンジーゴメス・チェンバリンが得意のふてぶてしさで広末の頬にチューし、のみならず果敢なるゴメス、今度は目と目を見合わせながら正面から唇と唇でチューしたのだった。一連の映像は無駄がなく自然だった。瞬間、おれの陋屋に天使が通った。広末は堂々たるもので慈愛に満ちた表情すら浮かべてサルをまっすぐにまなざし、ゆっくりとサルと広末は接近していったのだ。

坂本龍一は「thatness and thereness」(1980)で、そして矢作俊彦は『ららら科學の子』(2003)で、機動隊と学生の衝突を奇しくも共通してスローモーションで描出しているが、おれにとってもその瞬間、液晶モニターの向こうで展開されるランドスケープはスローだった。シネマの扇情装置とは、映像の神話学とはこれか、そんな風に思った。こんなこと何でもないじゃないか。ただの若妻とオス猿のままごと、一瞬のあやまちじゃないか。それとももしやおれはサルに、チンパンジーに対し嫉妬しているのか?ボク大丈夫か? おれは動揺したが重要なのはおそらくそこではない。緩んだ深夜の脳味噌にゴメスと広末の映像が飛び込んだ瞬間の、予期せぬ脊髄の強烈な反射に、何ヶ月か前に以下のような醒めた日記を書いたにも拘わらず、未だ自分が広末の呪縛のようなものから自由でないことに気づき、慄然とした。

http://lot49.lolipop.jp/mt/archives/2006/06/post_7.html

気を取り直して、今週末のDJイベントのタイムテーブルが決まったのでお知らせしたい。なお、亀田コウキの人は亀田名義での出演がキャンセルになり「キムタク」になったが、大勢に影響はない。

スーフリナイトVOL.2 タイムテーブル

17:00-17:30 とんびのからあげ(未来の文学
17:30-18:00 山本J太郎
18:00-18:05 スーフリナイトVOL.1 PLAYBACK MOVIEEEE!directed by タナカ
18:05-18:35 キムタク
18:35-19:20 かちゃくちゃ(DJ & Tribal Poetry)
19:20-20:00 TBA (special guest DJ)
20:10-20:50 ryuto taon (Live)
20:50-21:35 横文字三郎(エロ編)
21:35-22:00 ワールドジャパン

■2006年11月18日(土)■17:00〜22:00■千駄ヶ谷Loop-line■Charge 1500yen + 1drink■DJ エロ編(エロ本編集者の憂鬱と希望)、かちゃくちゃ(大衆決断/サプリメント遁走)、ryuto taon、とんびのからあげ(未来の文学)、山本J太郎、キムタク、ワールドジャパン、 Special guest DJ
※入退場自由。飲食物の持ち込みはご遠慮ください。

イベントに向けて気持ちを鼓舞しようと後藤明夫編『Jラップ以前 〜ヒップホップ・カルチャーはこうして生まれた〜』 (1997,TOKYO-FM出版)を読んだ。いとうせいこう近田春夫小玉和文高木完ECDほか、85年〜90年くらいにかけての日本のヒップホップの揺籃期を駆け抜けたパイオニアたちの肉声を切り刻んで再配置したインタビュー本である。「日本のヒップホップ」を主役にしたオーラルバイオグラフィと言える。インタビューイーのいずれの発言もたいへんに濃いが、特にいとう、近田、小玉の三人は、真摯な思考を的確な言葉に乗せて当時を証言しており、至言箴言の椀盤振舞状態で、付箋を貼るのをやめられん。フリースタイルや脚韻を重視せず、意味やテーマを尊ぶ近田氏と、日本語の語感とリズムの面白さにこだわったいとう氏を対比して編者は興がっているが、このあたりの個々の発言には批評的な緊張感すらある。

ここに登場する近田氏のことばには、余計な装飾やごまかしが一切ない。特に以下の発言は、ヒップホップ論を越えて、近田氏自身による自身の批評であり、現在にいたるまでの日本の地下音楽家たちの活動を肯定する優れた知見である。

「非ミュージシャンによる音楽革命」って、ちょっと誤解されやすいから、新たにつけ加えておけば、どんな人間でも技術というものとセンスというものがあるでしょ。で、結果的にその作品を見た場合、どのレベルにおいてもその人間の技術より、センスというもののほうが上回っている音楽のほうが、私にとっては価値があるという意味なんですよ。
 つまり、非ミュージシャンっていうのは、ミュージシャンに比べると技術がないという比喩的な表現なんです。
 自分のなかで一番意識していることななにかっていうと、ひとつは新しい方法、新しい秩序をどれだけ多くいち早く、発見、発明することができるかっていうこと。
 それと、そういうことをやっていくうちに、二十歳ぐらいから常に気にし出すようになったことは、人が自分の音楽を聴いたときの最初の反応が<聴く>ではなく<踊り出す>っていうことが重要だっていうことです。

関係ないが、つぎの言葉もグッとくる。

端から見たとき、大きなひとつの枠としてくくられるとしても、なかでは一人一人がまったくちがうことをやっているんだっていう意識を持っているにもかかわらず、遠くから見たときに、同じものに見えるっていうものが、俺、ひとつの<ジャンル>っていうものだと思うんですよ。


DAFの「Der Mussolini」のマッシュアップ動画を見付けた。動画のネタ選びのセンスがすばらしい。MCハマーがこんなにカッコよく見えるなんて。

http://youtubech.com/test/read.cgi%3fdl%3dolU40fxAXZs%26ext%3d.flv