働くおっさん劇場をおれはもう擁護しきれない

働くおっさん人形」という松本人志出演のミニ番組が以前(2002年10月〜2003年5月)あった。毎週日曜のド早朝、5時台に5分番組でやっていた。松本が何か実験的なことがしたくて始めたとかだったと思う。『QuickJapan』で小特集も組まれていた。リアルタイムでは見ていなくてあとでDVD→amazonを買って見たら、えらくハマった(スーフリナイトの一回目でDVDを流した。その時K子に貸したがまだ返ってこない)。

その「働くおっさん人形」がリニューアルし、この10月から「働くおっさん劇場」として、深夜の30分番組となって放送されている。それも好きで毎週見ているが、始まったころにトヤマさんから、「おまえが推薦するから見たが、この番組にはオヤジ狩りに通じるうすら寒さと不快感がある」というような指摘をメールでもらった。以前からうっすら感じていたが、尤もだと思った。

この番組は40代〜50代くらいの、平均的な価値観から見たら、人生を成功しているとは言い難い、逸脱したおじさんが4人登場して(以前が中野正次という歯並びの悪いおっさんが出ていたから5人だった。中野さんはなかなかキレ者っぽかったから自ら降りたのか、スタッフの評判が良くなかったのか、あるいは……。追記:ラジオによると<引きこもり>になってしまったらしい。http://shintaness.blog69.fc2.com/blog-entry-525.html)、松本から毎回、課題や質問を投げかけられ、それにリアクションする。それをおやじを真正面から映したカメラで放送するという低予算な番組だ。そのオヤジいじりが酷い。しかし、人権を軽んじている、弱者苛めだと詰る自分がいるかというと、その前にオヤジの振る舞いや表情を見て爆笑してしまう自分がいるのである。醜悪だ、とてもおれは醜悪だ。しかし面白くて抗議することも視聴を辞めることもできないのだ。そこがむつかしい問題だ。

思えばDVDのパッケージは、AVのパッケージを模したデザインになっていた。レイプものAVをめぐって、以前フェミニズム学者があるAV監督をつよく批判する事件があった。それと似たものをおれは感じる。そして番組は30分になって、よりタチが悪くなった。5分のころは早朝だったし(見たい人だけが探してきて見る、抗議するような連中は見ない、というゾーニングだったのか??)、基本的にはインタビューが大半だったからそれほどエグくなかったが、30分になり、オヤジに海に行かせて女の子にナンパさせるとか、明らかに構成作家と判る秋葉系の若者の人生相談をおっさんが受けるとか、おっさんの痛々しい体当たり企画が増えてきた。特に野見さんというどうしようもなく一挙手一投足が憐れなおやじがいて、彼がどう見ても群を抜いて面白いので何でもやらされるのだが、それが見ていて「罪悪感を伴う笑い」を通り越して、単に後味の悪さしか残さなくなってきた。毎回、その日にやる企画の名前(これが毎週わざと長い。たとえば先週のは「ワンランク上のおっさんは若者の魂にガツンと響くような大人の意見をサラリと言える」)を、指名しておやじに復唱させるということを最近はやるのだが、これがうまく言えなくて眼球を泳がせ顔をひん曲げながら言葉を必死で搾り出す野見さんと、それを別室で見て笑う松本の映像は、もはや軍事教練とか集団いじめを想起させるものでしかない。

で何が言いたいかというと、今回の「働くおっさん劇場」は、限度を超えてしまっている。いくらオープニングでこの番組は「働くおっさんたちとともに、テレビの前の皆さんがワンランク上のおっさんを目指して、教養を深めるためのおっさん教育テレビです」というお断りを出そうと、もはやこの番組が、出演者である四人のおっさんへの電波を使った公開いじめでしかないことは誰の目にも明らかではないか。