後藤明生『汝の隣人』(河出書房新社)、山本七平『「空気」の研究』(文藝春秋)が届く。

 九月のある夜更け、GがKの短編小説を読んでいると、救急車のサイレンがきこえて来た。しかしGは、そのまま読み続けた。
 Kは、あのチェコの作家のKではない。つまりKは、Gの同業者であり、大先輩だった。したがってGは、Kのことを「Kさん」と呼んでいる。KはGのことを「G君」と呼んだ。お互い面と向ったときも、誰かに話をするときも、それは同じことだった。ここ二十数年来、それはずっと変らなかったのである。

「汝の隣人」冒頭

のっけからパンチが効いている。『汝の隣人』は、小島信夫の登場で始まる、小島的方法論で書かれた連作だ。
後藤氏は小島氏に、リスペクトやライバル心といったものを超えた複雑な気持ちを持っていたはずだと、保坂和志は小島氏との往復書簡で書いていて、たいへん興味をそそられたことがある。この本と、読みかけたまま積んである、後藤氏が登場する小島氏の『暮坂』(←ややこしい)を読むことで、自分はその謎に近づいていくことができるだろうか。

#ヤバイ本が出ている。