ZAZEN BOYS 5.2

ZAZEN BOYS(http://www.mukaishutoku.com/)のライブを見に渋谷。今週は3本、PANICSMILEhttp://panicsmile.hp.infoseek.co.jp/)と54-71という気心知れたバンドとのトリプルツアーがある。先週のロフトは二曲っきゃ見られなかった。鬱憤溜まって道玄坂を上がる足腰も頑健頑健。

円山町まで来てapが見えると思わず左手のネストに上がりそうになるが今日は右手だ。O-westだ。19時半に会場入りするとすでに1組目が終わった後だが空気がぬるい。『MINIATURES』リリース後の過剰すぎるパニックスマイルが受け容れられなかった後の空気かと思ったらそれからステージに二本のマイクが押っ立てられて、54が終わってこれからパニスマだと判った。もうちょっと熱く行かないとはじまらんよ。もうちょっとグッと行こう。

2組目のパニスマはけっこう長くやった。基本的に『MINIATURES』から。吉田肇が主に日本語でグイグイ歌ってるのと、石橋のボーカルが激減して、かわりにドラムをバシバシ叩いているのが今度のアルバムの特徴だ。パニックスマイルの開き直りだ。後半はナツメンの管楽器の人が加わってフリーキーな良い具合だった。

それで座禅。短かった。

1.Fender Telecaster 2.USOFDARAKE 3.MABOROSHI IN MY BLOOD 4.IKASAMA LOVE 5.新曲 秘密ガール? 6.KIMOCHI 7.YOU MAKE ME FEEL SO BAD 8.COLD BEAT 9.自問自答

松下敦のドラムは見ていて安心感がある。退場時、あの巨体にベースの日向がペタペタ触っていたが、気持ちはよく分かる。松下の巨体にはそうした安心感がある。思わずもたれかかりたくなる。「バンドの屋台骨」って感じがする。6、7の向井の歌唱を際だたせるドラマチックなドラムはかなり聞き物。だがその分、ソロの印象が薄い。本人はがんばってやっているがトリッキーな感じに欠ける。zazenはそのライブ史において、どんどん各人のトンがッたソロを要求するライブ演奏形態になっているからそこをクリアーしないといけない。日向はよくやってる(ルックスが徐々に黒人化していっている。彼の容貌の変化の過程を追っていけば、一つのZAZENの精神史が描けるはずだ)。吉兼は元から傑出してる。ロフトでもやった「開戦前夜」のバトンタッチしていく長いソロも、8の後奏でのドラムソロ+セッションも、いまのzazenライブにおいて二大聴かせどころなのだが松下のドラムは印象薄だった。その点アヒトのそれは狐憑きみたいで次にどうくるかいつもドキドキしたものだった。好きずきだが。松下はBuffalo Daughterでやっているのを2、3度見たが基本はデジタルビートにあわせていくストイックなドラムで目立たなかった。だからZAZENに入ると聞いて驚いた。今のところその時見た印象通りをあんまり裏切っていない。

でもまあエロ編(id:erohen)が書いているようにように、<もう少し時間を置いてから評価を下したほうがフェアであろう。僕たちは何年も向井とアヒトのセッションを聴いてきたのだから。>というところだろう。

上の日記で松下加入後の(つまりロフトでの)楽曲の変化・深化について触れられていたが、2は確かにだいぶ変わった。レゲエではないが尖ったビートがやや緩くなった。おれはライブセットの前半で演奏されるこの曲でカーッとなってテンションを上げるフィジカル調整をこれまで行った来ていたのでこの変化はちょっと残念。いまのzazenには実は、前半でズガッと上げていく曲がない。なんというか、腰をくねらせる曲は多いがヘッドバンギングさせる曲がない。向井がプリンスを愛し、ブラックミュージックを愛し、自身のボーカリゼーションを愛しすぎたひとつの陥穽だ。好きずきだが。あと向井は歌ってて自分のボーカルに入り込みすぎると歌詞を忘れるくせがあって面白い。

5みたいな曲があると陣野俊史氏みたいな人が「舞城と向井の共通点は〜」的な比較雲鱈学な世界に入り込みそうだ。曲はもちろんカッコ良い。複雑演奏+色気のボーカル。しかしファンは段階的に踏んでいるから慣れているけれど、一発目に聴くにはハードな曲だ。今後、入門編には『ZAZEN II』ということになるのか。それにしてもハードだが。

6、7の接続は吉兼のギターがフェイドアウトしてそこに向井のギターが割って入ってくる。その感じ、i-tunesのクロスフェード再生みたいでカッコいい。

5、6、7を続けて聴いていると様式美という言葉が浮かんでくる。1で始まり9で終わるのも一つのそれ。ソウル、ファンクなど黒い音楽を取り入れ、向井はどんどん様式化していったのだ。ナンバーガールの時にはナムヘビでちらっと顔を覗かせてはいたが、そういうのはなかった。せいぜいライブの終盤で「はいから」が来て、「OMOIDE IN MY HEAD」で終わるくらいのものだった。だから最後のツアーで1曲目が「I don't know」というのがあり得た。おれは不満だったけど。最後まで「1曲目」を持たないバンドだったのだ。まあ好きずきだが。

それとナンバガは最後に「I don't know」を見つけたけれど、zazenにとっては弥次喜多の「I wanna be real fuck」がある。この曲の存在はでかい。早くライブセットに取り入れるべきだ。身を浸したい、一日でも早く。

9は松下のドラムと向井ギターのみで構成されたストイックなバージョン。一昨年の後半から去年のはじめあたり、リズムボックスでやっていたバージョンを思い出す。その分最後にギターベースが加わってグワーッと盛り上がる。

しかし食い足りない。もっと手の内が見たい。あと今、松下のハイハットの根本あたりにはぬいぐるみのクマちゃんらしきものが括り付けられていたことを思い出した。