1-4.初日はROVOで締めた

RSRは奥のムーンステージというところがフジのフィールドオブヘブンにあたる、ちょっとトライバルな雰囲気のバンドが出たり、あと卓球のLOOPAナイトもここで行われたりするのだが、石野卓球川辺ヒロシのInkはけっこう興奮した。井上陽水「氷の世界」のカバー、ボーダフォンのCFソング「ベースライン」と畳み掛ける。CDではよく分からなかったが、たぶんこのユニットのコンセプトには、ジャケットが巨大なカセットテープであるように「アナログ」なり、「DJの身体の解放」なりがあるんだと思う。ブースで体を動かして、うまい下手に拘泥せずに放縦に歌い上げる卓球の勇姿を見ると分かる。あとリアルタイムに、けっこう自由に曲をいじったりしているように見えた。よく分からないけど。

初日はおなじくムーンステージのROVOで締めた。ゆらゆら帝国を1曲だけ見て急いで移動したのはフェスならではの贅沢というか勿体なさがあったが。ROVOは22時30分から23時30分までで、それ以降も怒髪天、レックと中村達也によるFRICTION、2006年のDJ界を回顧したときに、おそらく卓球と並んで「我慢しきれなくなって歌い始めたDJたち」というテーマで語られるであろう山本mooogのバッファロードーターなど面白そうなラインナップだったが、これら深夜はテントを持ち込んでいるキャンパーのみが見られる。宿を外にとっている人間は、終バスの関係でここですごすご打ち止めなければいけないのだ。なのでROVOが最後。

きっと『MON』に入っている「LOQUIX」や「iNax!」をやってはては「KNM!」に突入していくような、分かりやすい、フェス仕様のセットでくるものだと予想していた。そしてそれを期待していた。そうしたら冒頭のMCで勝井さんが、「今日はRSRに呼んでもらうのも三年目になるが、今度出る新曲『コンドル』を初演奏する。この曲は1時間に亘り、3つのパートに分かれている」と説明してまさかの「コンドル」へ。

3部構成だが基軸となる原田さんのベースラインが重たく単調で、ドカーン、ウギャーというような曲ではない。なかなか分かりやすいブレイクが訪れず、最奥のステージにも関わらず、諦めた顔で去っていく人、入ってくる人でPAそばは潮目みたいになっていた。

この曲に関してはまだよく分からないが3部は、勝井さんが上品な高揚感を持ったフレーズを延々と、執拗に、呆れるくらいに繰り返す。それが徐々に勝井さん自身と楽団のダイナミズムを生み出してまさにコンドルが際限なく飛翔していくのだが、ここは言ったようにドガーンではなく、あくまで上品だったけれど、非常に心地よかった。とにかくしつこい程繰り返す、その運動の軌跡が気持ちよかった。

ギトギトのコッテリを期待していたら野菜中心のヘルシーディッシュが出てきたみたいな感じで消化不良は否めなかったが、それはおれが悪いんであって、前作までのリゾート志向、ポップ志向を一旦中座して、大きく出てきたROVOの挑戦に拍手したい。