映画『コントロール』を見た

渋谷シネマライズ(接客がたいへん丁寧)で『コントロール』(2007,アントン・コービン監督)を見た。ジョイ・ディヴィジョンイアン・カーティスを主人公にした伝記映画である。夫人のデボラ・カーティスの原作"Touching from a Distance"を基にしており、共同プロデューサーとしてデボラが参加している。イアンは1980年5月、家で首を括って死んだが、なにが原因かははっきり判っていない。監督もデボラも、そのあたりの落とし前をつけるつもりで作品に取り組んだのだろうが、実際どうだったのかはよくわからない。

とはいえ、ジョイ・ディヴィジョンのファンであるものの、イアンの人となりについて、"24 hour party people"で見た以外、あんまり知らなかったおれにとって、彼が、バンド結成後からてんかんを発症し、それに悩んでいたこと、あとはデボラとアニークという二人の女性と、うまい距離と関係を取れずにひたすら悩んでいたことを、史実として知ることができた。

バンドの演奏シーンも、ちゃんと練習したことが判る、きちんと音と手先が同期したものでカッコいいし、松浦美奈による楽曲の字幕訳詞も、抽象度が高いイアンの詞を、押し付けがましさなくストーリーにうまくかぶせていて良かった。バーニーが優しげでちょう頼りないのも微笑ましい。見た目内容うすそうなパンフレットも、なかなか充実していて買いである。イアンを演じるサム・ライリーが、イアンのてんかんについて語った発言を引用する。

「健康だった人が絶えず続く恐怖の中で生きなければならない精神状態を理解することが大切でした。発作が起きれば死ぬかもしれないし、身体を傷つけるかもしれない。屈辱的なことですよね。なぜって、発作により身体機能をコントロールできなくなるし、周りの人の多くはどう対処したらよいか分からないですから」。


♯「映画の精神医学」というよく読まれているメルマガで、『コントロール』が取り上げられている。精神医学の見地からイアンとてんかんについて論じられていて面白い(15日追記)。

http://archive.mag2.com/0000136378/20080322113000000.html