「止まっては、また動き出す。全てのものがそうだと思うんですね。止まっては動き出す。動き出してはまた止まる。その繰り返し。そんなことをね。表現したいなと思っとるわけなんですね。」
http://d.hatena.ne.jp/magro/20080825#p1より


「止まってはまた走り出す。
 Stop and Go!
 何度も立ち止まっていいんですよ、
 また走り出せばいいんですよ。
 そういうことを表現してる
 …表現したいわけね。」
http://ouchi-kko.cocolog-nifty.com/ouchikko/2008/09/rsr2008zazen-bo.htmlより


上記は8月に行われたRISING SUN ROCK FESTIVAL 2008 in EZOにおける、ZAZEN BOYSライブ演奏中の向井秀徳のMC(「COLD BEAT」の演奏静止時間中に行ったものだったか? この他、MCの文脈に呼応させ、出演ができなくなった忌野清志郎へのメッセージも喋っていた)を記録した、ファンの方のブログエントリーからの引用です。ZAZEN BOYS結成以後、向井はめったにライブ中、MCをしなくなったからこれは印象的だった。上記のMCはもちろん、完全な思いつきで喋っているから笑ってしまうんだけど、笑いの中にちらっと、本音、あるいは真摯さみたいなものが顔を出していて、ナンバーガールから変らない、向井がつくる異常音楽のエッセンスに触れた気がして、石狩の26時の夜闇のなかでおれ、心が温まる気がした。この引用をもって、「七夜連続日刊大衆決断」が三夜で途絶したことのお詫びとしたい。あるいは体のよい誤魔化しとしたい。

西村賢太の新作からゴーゴリ的な茶目っ気が後退して単なるちょっとコワい人になってきちゃった、というような話を書きたかったが、毎日つぎつぎ面白い本や雑誌が出てくるから書けない。渋谷O-nest54-71のワンマンライブから帰る電車んなかで読みはじめた(よう訪れませんが、渋谷のブックファーストは、あれはあれで、けっこう面白いお店ですね、『大友良英のJAM JAM日記』河出書房新社三浦俊彦戦争論理学』二見書房ほか、1万円弱買って、車中、Minor Threatのアルバムジャケットみたいなポーズでいつもの自己嫌悪。足元には巨大な紙袋。←脚韻を踏んでる。ブクファの新宿モード学園店オープンは来月)、保坂和志の『小説 世界の奏でる音楽』(新潮社)がすばらしい。保坂の小説論はぜんぶ愛しているが(小説のほうは何冊読んでもからきし読めない)、古今の小説や哲学、精神医学だけでなく、親戚や小島信夫の死すらも呑み込んで、この本は文芸評論を超え、小説のような、叙事詩のような、未知の世界に入り込むことに成功した。

特に、自分がここのところ関心を持っている、精神病者の見た世界や『夜露死苦現代詩』的な作品、事象、つまり「異常な五感の感覚」や「異常な文章」についての知見も豊富に入っていて、言うことがない。執筆動機として、小島信夫の『私の作家遍歴』(潮出版)のような、いつまでも終わることがない小説論を書きたかったのだとあとがきで著者は書いているが、まさに『新潮』での3年間の連載をまとめたこの三巻でもって(そういや『遍歴』も全三巻)、保坂は小島に大きな恩返しをした。

保坂氏のように小説と触れ合いたいと自分はつねづね思っているし、ある程度はそのように触れられるようになってきたとも思っている。触れられない小説は読み物小説だと遠ざけて、でも根がミーハーだからお風呂でびちゃびちゃにしながら読んできた。自分もこのような小説論を書いてみたいと思う。そこには、氏の小説論と並ぶように、小林信彦の『小説世界のロビンソン』や、吉田健一の『時間』が顔を合わせているだろうし、小島信夫ZAZEN BOYSも召喚されるだろう。佐藤亜紀の絵画論も参照されるだろう。そういう気にさせられる、いかに小説に淫するかというお手本を、この長大な連載はつねに示しつづけてきた。

ところで今月末、同書刊行記念イベントが青山ブックセンターで開かれ、樫村晴香、古谷利裕といった保坂氏と関係の深い人物との鼎談形式となるそうだが、予約が始まった日からかぞえ三日目に電話をかけたら、もうぜんぶ埋まってしまったと沈んだ声音で店員はおれに伝えた。コンサートかお芝居じゃねえんだから、一体どんな連中なんだい、作家の講演会の予約をしに、受付開始して直ぐに電話をかけてくる読書家ってのは、とおれは友人に後日毒づいたが、その現象が腹立たしくもありながら、それでいてちょっとすてきなことでもあるように、いまでは思われてくるのだった。

●さっき、嵐のバラエティ番組「VS嵐」を見ていたら、その前にやったスペシャルバージョンの未公開シーンなどを流す体裁でやっていて、芸人チームとアスリートチームと嵐の三つ巴合戦、という体だったのだが、芸人席のひとりが終始モザイクをかけられていて、だれだか判別できないようになっていて、その様子がきわめて異常だった。嵐が好きで好きで仕方が無くて来週には台湾公演に出掛ける、元ナンバーガールのおっかけを一緒にやっていたYさんにメールで尋ねたら、小島よしおだと思うが、なぜモザイクかは判らないという。試みにブログ検索かけたら(おぢさんが子どものころには、RSSなんてなくて、今の子はほんと、恵まれてゐる)、何件か話題になっているみたいだ。テレビをかけながら眺めていた保坂の文学論の世界と共鳴するような気がして、ちょっとだけ震撼とした。

http://blog-search.yahoo.co.jp/search?p=%E5%B0%8F%E5%B3%B6%E3%82%88%E3%81%97%E3%81%8A%E3%80%80%E3%83%A2%E3%82%B6%E3%82%A4%E3%82%AF%E3%80%80%E5%B5%90&cop=&ei=UTF-8

●これから文化放送のホールで、菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラールの公開リハーサル。タワーレコードのフリマガ『intoxicate』がやっている「ecole」(アクサント出せません)というイベントの第二回だが、前回は、坂本龍一と高谷史郎のDVD『LIFE(後略)』の上映をしながらの作家トークというのをやっていて、これも見に行ったけどだいぶ面白かった(ATAK渋谷慶一郎の、天才肌で厭世家的な、小気味のよいトークも)。

http://www.uniqueradio.jp/2008/09/12/001739.html
http://blog.intoxicate.jp/content/2008/09/unique-the-radi.html

文化放送ネットラジオ「UNIQue the RADIO」は、イントキや、イベント集団kikyu、サラーム海上といった人々がアイデアを持ち寄って番組編成に主体的に加わっていて、個々バラバラに刺激的な動きを見せていて、ひっそりと面白い。

http://www.uniqueradio.jp/

次回は、何度かつづけて書いている、インディペンデントなロックフェスについての長文を載せます。