book

飯田橋の文鳥堂で小島信夫と森敦の『対談・文学と人生』(講談社文芸文庫)買う。…「買う」はいいけど、これは生半可な気持ちで取りかかれる書籍じゃない。つらつらおいしいところをつまみ読みして取り澄ましていられるような本じゃない。不意打ちの店頭でお…

『文學界』二月号をしゃぶるように読む

『文學界』二月号掲載の小林信彦「うらなり」読了。期待した以上に面白かった。『袋小路の休日』系統の味わい深い作風だ。『ぼっちゃん』のうらなりが年をとって明治、大正、昭和に亘る人生を回顧する。しかし水村美苗のような二次創作的アプローチではなく…

漫然と話をさせてくれ。今日は。筋書きのない与太話を。やっぱ新聞は便利だな(先週末からまた取り始めた)。朝日新聞の出版広告でちくま文庫の復刊フェアが今月あることを知る。しかしちくま文庫が復刊するのか。おれいま咄嗟に何かのバンドの復活に喩えよ…

まがじなりあ・あちらこちら7 −『kitten』ですごい対談を読んだ

御苑の模索舎で岡村詩野の『kitten issue6』(http://www.kittenmagazine.net/)、北田暁大1面インタビューの『図書新聞』、鎌田哲哉編『LEFT ALONE 構想と批判』(「重力」編集会議)を買った。キトゥン誌のLimiter Express(has gone?)(http://www.limited-e…

ぼく(たち)の好きな冒頭 9、あるいは、『青白い炎』を読むつもりじゃなかった

四つの詩篇に分たれ、九百九十九行より成る、英雄対韻句(ヒロイック・カブレット)の詩『青白い炎』は、その生涯の最後の二十日間に、アメリカ合衆国アパラチア州ニュー・ワイの自宅で、ジョン・フランシス・シェイド(一八九八年七月五日生れ、一九五九年…

まがじなりあ・あちらこちら 5 * きれぎれ文学考察 5

今度書こう、と思って雑誌を積んでおくのだけど、ふっと気付くと2週間くらい経っていて、もういいや、つまらん、となることは数数え切れない。でもTBSラジオで糸井重里がやっている「ザ・チャノミバ」で*1、糸井氏の相手役になってバービーボーイズのKONTAみ…

日曜日の朝刊、おれんちは朝日新聞だが、一面下のスペースに筑摩書房が広告を出していて、そこに載っていた本がちくま文庫の『定本 畸人研究Z』(→amazon)ただ一冊だったのでアレっと思った。本のクォリティが大々的な広告に見合わないという意味ではもち…

ぼく(たち)の好きな冒頭 8

書くことでも、ほかのこととおなじで、幸運は助けになる。ジェラルドとセーラのマーフィ夫妻と出会ったことは、わたしには職業的にも個人的にもたいへんラッキーだった。そのことではふたりの幼い娘に感謝している。ジョージ・ワシントン橋の北十九キロのハ…

□<妙に良かった>といえば、中森明夫の哀愁あふれる金井美恵子『目白雑録』書評を紹介していなかった。 生活の美学者としての作家、卓抜な人性批評家(モラリスト)が日常の内にひらりと鋭い批評眼を光らせる。その真髄がファミレスとコンビニ食とB級アイド…

上野まで来てまだ20時前なら、行くところは一つっきゃないだろ、そんな気分で小雨の中自転車は不忍通りを滑っていくのだ。中途にある千駄木駅前のカフェで『ドン・キホーテ 後篇(一)』(岩波文庫)(→amazon)を読み終え、往来堂書店(http://www.ohraido.…

神保町で『ファウスト VOL.3』(講談社)(→amazon)、高橋悠治『高橋悠治 コレクション1970年代』(平凡社ライブラリー)(→amazon)、浅羽通明『アナーキズム 名著でたどる日本思想入門』(ちくま新書)(→amazon)、『青山真治と阿部和重と中原昌也のシネ…

後藤明生『汝の隣人』(河出書房新社)、山本七平『「空気」の研究』(文藝春秋)が届く。 九月のある夜更け、GがKの短編小説を読んでいると、救急車のサイレンがきこえて来た。しかしGは、そのまま読み続けた。 Kは、あのチェコの作家のKではない。つまりK…

深夜プラスワンで小塚毅之撮影『内田さやか写真集 Shiny Stocking』(アスコム)買う。完全にジャケ買い(しかしジャケ買いでない写真集購入動機があるだろうか?)、しかしより正確に言えばタイトル買い。「シャイニーストッキング」なるフレーズ、到底常人…

愉楽百景、あるいはある日本語の系譜

「ところでだ、お前のチンポだが、ちゃんと剥けてるのか? 包茎手術とか、ここでやっといたほうがいいんじゃないか? 今なら無料だぞ。どうだ、一つやってみるか? 何なら、鼻とかも別にいらないんじゃないのか? 穴さえあれば足りるわけだからな。斬っちゃ…

タワレコで『HISTORY OF JAGATARA ナンのこっちゃい I』(→amazon)、ゆらゆら帝国『な・ま・し・び・れ・な・ま・め・ま・い』(→amazon)を買った直後に翌日からポイントが二倍になるという告知を目にして陰鬱な気分に陥ったが、直後に石原さとみが表紙の…

ぼく(たち)の好きな冒頭 7

初めの間は私は家の主人が狂人ではないのかとときどき思った。観察しているとまだ三つにもならない彼の子供が彼を嫌がるからと云って、親父を嫌がる法があるかと云って怒っている。畳の上をよちよち歩いているその子供がぱったり倒れると、いきなり自分の細…

ナボコフの『青白い焔』、四方田犬彦の摩滅の研究(もう何年も前から予告していた仕事だ)、片岡義男の文庫など、今月来月の筑摩書房の新刊は、充実したラインナップ(情報元:ヤスlog)。http://d.hatena.ne.jp/yasulog/20031005#p1

ぼく(たち)の好きな冒頭 6

人間の記憶は薄れやすいものである。 おそらくは今日、十五年前日本を揺がした一大事件と、それに続く戦争状態という比較すれば散文的な事態とをあえて思い起そうという者はあるまい。地方の一県が分離独立したからといって、日本全土を暗雲が覆い尽くした訳…

早稲田青空古本市は明日から。http://www.w-furuhon.net/aozora/

神保町で『芸術新潮』10月号、『別冊宝島885 教科書が書かないJポップ批評30 YMO&アーリー80's大全』、『彷書月刊』、『波』、『一冊の本』、『en-taxi』3号、『BUBKA』、付箋二つを買い、ジャニスで羅針盤の新しいミニアルバム、ニール・ヤングの『ZUMA』ほ…

片岡義男の名著が、今月ひっそりと文庫で出た。http://www.monolith.co.jp/~ital/kataoka/kadokawa-b2.html#sotoどこから読んでも面白い本だし(つまり文庫向きだ)、単行本はかなり重たいので文庫で買い直したいが、問題は単行本を買ったのは今年のことであ…

ぼく(たち)の好きな冒頭4.5

目が覚めて、オオタタツユキが最初に見たものは、3チャンネルの粘土アニメだった。さっき見たときは、不思議な体操をしている人々が映っていたはずだと思い、自分の記憶が飛んでいることに彼は気づいた。画面の中では、カンガルーに似た奇妙な生き物が、飛行…

ぼく(たち)の好きな冒頭4

『吉野太夫』という題で小説を書いてみようと思う。といっても、誰もがよく知っているあの吉野太夫のことではない。京都島原(本当は六条だということらしいが)の名妓吉野のことではなく、同じ江戸期でも、中山道は追分宿の遊女だったという吉野太夫のこと…

東京堂にて

「万引き撃退文学全集刊行!!」の貼り紙を発見す。もちろん架空の全集企画である。無粋なものに粋で対抗するのは元来勝ち目のない戦いであるけれど、なかなか味なこと考えるな。写真では見にくいでしょう。ラインナップは次のような感じ。 第一巻 罪と罰 ドス…

ナスカ・カー(http://sound.jp/nascacar/)とKIRIHITO(http://www.geocities.co.jp/MusicStar-Vocal/9526/blackangle_001.htm)が対バンするというので20000Vまで行ってみたら、日にちを間違えてた。20日だった。もぎりをやっていたのは早川店長で、「キリ…

旭屋書店でロバート・エヴァンズ著 柴田京子訳『くたばれ!ハリウッド』(文春文庫)買う。文春で坪内祐三の書評を読んで。ぱらぱら立ち読みしていたらびっくりするような文章にぶち当たって、そこでさっとレジに運んでいった。所持金1400円で税込みで1260円…

ぼく(たち)の好きな冒頭 3

それで吉田健一の『時間』でも気取って引こうかと思ったのだがなぜか見あたらないので唐突に山本夏彦の『無想庵物語』(文藝春秋)の書き出しを引く。 無想庵武林盛一は私の父露葉山本三郎の友で、武林は明治十三年生れ父は十二年生れの同時代人である。武林…

暑いので神保町で本を買う。東京堂で、寺田博編『時代を創った編集者101』(新書館)、内田樹『ためらいの倫理学 戦争・性・物語』(角川文庫)、大塚英志『サブカルチャー反戦論』(角川文庫)、ウィリアム・バロウズ著 鮎川信夫訳『裸のランチ』(河出文庫…

ぼくたちの好きな冒頭2

読み終えたばかりの吉田健一『絵空ごと・百鬼の会』(講談社文芸文庫)から「絵空ごと」の冒頭を引く。吉田健一を新かな遣いで引用するというのは野暮天もいいところだが、『絵空ごと』の単行本版(昭和46年 河出書房)はなかなか見ないのでお許し願いたい。…

高田馬場大古書市

高田馬場BIG BOXで開かれる「大古書市」の初日に出かけた。会場は9階の催事場。玄関口でやっている古書市には数え切れないぐらい通ってきたが、このイベントは初めてだ。会場はホテルでパーティーなどやるようなスペースだがうす暗くて埃っぽく、あまり良い…