book

「止まっては、また動き出す。全てのものがそうだと思うんですね。止まっては動き出す。動き出してはまた止まる。その繰り返し。そんなことをね。表現したいなと思っとるわけなんですね。」 http://d.hatena.ne.jp/magro/20080825#p1より 「止まってはまた走…

本はさいきん高いか

書物狂いには<書痴><書狼><書豚>の三段階があって、病膏盲の度合いを示すとされる。その最高段階である<書痴>というのは尋常一様の本好きでは済まないのであって、犯罪レベルに達する必要があるらしい。かりに世界に二冊しかない稀書中の稀書を手に…

わがよき坑夫

大友良英の単行本、栗原裕一郎『盗作の文学史』、「偽日記」の古谷利裕『世界へと滲み出す脳』など、今月は面白そうな新刊が軒並み2000円越えなので戦々恐々として本屋まわりす。そんななか新潮文庫「おとなの時間」シリーズとして新装した漱石『坑夫』はお…

映画『コントロール』を見た

渋谷シネマライズ(接客がたいへん丁寧)で『コントロール』(2007,アントン・コービン監督)を見た。ジョイ・ディヴィジョンのイアン・カーティスを主人公にした伝記映画である。夫人のデボラ・カーティスの原作"Touching from a Distance"を基にしており、…

ヘンな文章が好きだ3 あるマジックマッシュルーム・リアルタイム体験記

ハッシッシに萌えたベンヤミンは『陶酔論』(晶文社)を書き、各種ゴツいのをキメてヤーヘという謎のアルティメイタムドラッグを索めて南米を彷徨ったバロウズの各種著書など、文学的に麻薬の作用を紹介した文章は多いが、こたび紹介するマジックマッシュル…

ヘンな文章が好きだ1 N森さんの「錆鼠」

ヘンな文章が好きだ。それも、頭のネジがふっとぶくらい(マルシーBREAKfASTの森本雑感氏)のヘンな文章が。だから中途半端じゃ納得できない。「怪力の文芸編集者」はゲラゲラ笑えるくらいのマスターピースだと思っても、ほかの中原昌也の小説は中途半端に感…

ぼくたちの好きな冒頭12/ 大衆決断の切り抜き帖2 未知の共感覚論のためのスクラップ

赤ん坊の揺り籃は深淵の上で揺れているのだ。だれもが知っているように、私たちの一生は二つの無限の闇の境を走っている一条の光線にすぎない。ただ、二つの闇はまったく同じものだが、私たちは(毎時およそ四千五百回の鼓動数で)いまめざしている闇よりも…

まがじなりああちらこちら12 Pocketful of irritations −ポケットは苛だちでいっぱい

■ATAK主宰の渋谷慶一郎と、評論家の佐々木敦は、「ゼロ年代の『音響』と『音楽』をめぐって」『InterCommunication』 No.64 Spring 2008(NTT出版)でつぎのように話している。 渋谷――このあいだ、僕も科学未来館で行なわれた大友良英さんのコンサートに行っ…

本棚は真実のスーパースターでいっぱい

昨年11月、2段組700ページ超という超弩級鬼瓦本の体で『ラナーク―四巻からなる伝記』の邦訳を世に問い、知る人ぞ知るスコットランドの文学的巨人アラスター・グレイを本格的に(というのは短編集が一冊、すでに出ている)わが国の読書人に紹介した、国書刊行…

A recent topic

こんにちは。方々でまるで自分にプレッシャーを加えるように(近所に加圧フィットネスができたらしいので行ってみたい)言って(若干自慢気に?いつも以上に小鼻をふくらませて?)回ってるのだが、現在、おれは取り憑かれたように自身の英語読解力を鍛えて…

まじなりあ・あちらこちら11 きれぎれ文学考察4 『覆面作家「芥川龍」を追い詰める』という企画のはずだったが

前回(id:breaststroking:20071224#p3)から早数日。芥川龍のトピック、早く書かなきゃと思っていたら29日の夜、id:erohenからメールが来た。<サイゾーのウェブ見たか?/芥川龍、柳美里説。>うわ、抜かれた。記事(http://www.cyzo.com/2007/12/post_224.…

きれぎれ文学考察2 『「共感覚は文学にどのように作用するか 岸本佐知子、ナボコフ、ゴーゴリを手がかりに」という文章のはずだったが』

『SIGHT』(ロッキング・オン)の12月売りの号は、ここ何年か北上次郎と大森望による年間のエンターテイメント小説を振り返る対談(「BOOK OF THE YEARエンターテイメント編」)を載せている。毎年、おなじエンターテイメント畑でありながら全く嗜好がことな…

まがじなりあ・あちらこちら10 きれぎれ文学考察3 覆面作家「芥川龍」を追いつめる1

今日は、皆さんにちょっと、殺し合いをしてもらいまーす。高見広春『バトル・ロワイアル』(太田出版→幻冬舎文庫)より「坂持金発」の発言 新鮮なうちに書きたかったのだが連日忘年会だのイベントだの発熱だのでいっこうに取り組めなかった(なぜかいつも読…

ロックミュージシャンの肉声はどうしておれをここまで捕えて離さないのか

『KING-SHOW JIDEN 筋肉少女帯自伝』(K&Bパブリッシャーズ)、『NICE AGE YMOとその時代1978-1984』(シンコーミュージック)、『indies issue』最新号のアスパラガスインタビュー、『波』(新潮社)の佐藤寛子連載などを切ったり貼ったりの予定。

森見登美彦のエッセンス

これまでの日常を振り返ってみると、自分は大学生活というものをおおかた舞台袖から眺めて暮らしてきたのだという気がした。熱心に部活や勉強に打ち込む連中を横から眺め、大学生らしい馬鹿騒ぎをする連中を横から眺め、恋愛に右往左往する連中を横から眺め…

ぼくたちの好きな冒頭11

これは私のお話ではなく、彼女のお話である。 役者に満ちたこの世界において、誰もが主役を張ろうと小狡く立ち廻るが、まったく意図せざるうちに彼女はその夜の主役であった。そのことに当の本人は気づかなかった。今もまだ気づいていまい。 これは彼女が酒…

池袋書店戦争に1ページ、そして2006年アイドルグラビアの中心

今週はMars Voltaのゼップ東京公演に用事で行けなくなるということが二三日前に判り、チケットはうまく手放せたが歴史的な演奏になったみたいで落胆した。落胆とえいばスーフリナイトも到らないところがたくさんあったのでつぎは全部解消していくつもりで考…

ノベライズから浮かび上がる『デスノート』の革新

札幌駅そばのなにわ書房で買った西尾維新『DEATH NOTE アナザーノート ロサンゼルスBB連続殺人事件』(集英社→amazon)を読み終えた。『デスノート』を仮に、二つの高度な知性によって演じられる脱走と追跡のサンバだとするなら、このノベライズは『デスノー…

盟友西荻総理が経営する、2005年最も刺激的だった(今年はまだあんまり買い物してないからよく知らん)オンライン古書店PP BOOKSTOREのウェブサイトがスタートしていた。http://www.ppbks.com/index.shtmlウェブはまだおとなしいか?

このごろの読書

プリーストの『奇術師』『魔法』を連続撃破し、またちょっと短いものを挟みたくなったので、fairaさんがミニコミ『PLANETS』二号でインタビューしたという鹿島田真希の『六〇〇〇度の愛』(新潮社)を読んでる。往来座で400円で買えたのだ。鹿島田氏の小説は…

グッドマンの帰り、広小路まで歩いてソープランドそばのジョナサンでクリストファー・プリースト『魔法』(ハヤカワ文庫)了。25時30分。2日で読んだ自分にびっくり。興奮しているがもう一度走り読み返してみないと『奇術師』より高い評価を付けられるかよく…

ジュンク堂から1

上遠野浩平によるレムの『砂漠の惑星』(ハヤカワSF文庫)解説は好きじゃないが、森見登美彦の『太陽の塔』(新潮文庫)解説の本上まなみはオッケーだ。遊びじゃないんだ、という感じが文章から伝わってくる。オタを理解し優しく包み込む菩薩の系譜に本上は…

ぼくたちの好きな冒頭10

レムの『ソラリス』新訳版(国書刊行会)を読み終えたらしぜんと軽いものが欲しくなって、書棚で寝ていたデイヴィッド・ロッジの『小さな世界 アカデミック・ロマンス』を開いたら、どうも直接の関連はないまでも、大学ものということで『交換教授』の精神的…

訳者あとがきは教室なのだ

先週末ブックファースト渋谷のバラードフェアで買ったバラードの『殺す』(東京創元社)を早速読み終えた。たいへんに短い中編。特異な邦題からか以前から知っていた本だけれど、まだ『結晶世界』しか読んでいない人間が手に取るべき作品ではなかった。中級…

ディック雑考

日付が変わるごろまで近所のデニーズに蟄居して『「麻原死刑」でOKか?』(ユビキタススタジオ)とP・K・ディック著 浅倉久志訳『ユービック』(ハヤカワ文庫SF)を交互に読んでいた。いま気づいたがどちらも「ユビキタス」繋がりだ。そしていま思ったが、内…

まがじなりあ・あちらこちら8 30年後の文化史のために(、ささやかな深夜のスケッチ)

下記用件を済ませた後、24時半を過ぎてコンビニへ行くと、連休明けで忙しそうに店員が二人がかりで雑誌の入れ替え作業を行っている中、店員の姿を黙殺して立ち読みに励む男たちが三人。彼らは一様に、搬入されたばかりの『週刊少年ジャンプ』を手にして『DEA…

若島正を読んで背筋のてっぺんがぞくぞくっとする感じを味わう

2月から珍しくSFばかり読んでいるのだが、ジーン・ウルフ 柳下毅一郎訳『デス博士の島その他の島』(国書刊行会)を読んで、そろそろちがう雰囲気のものに行こうと思ってもいきなり国産純文学に行く気分にもなれず、これが一ジャンルにどっぷり浸か(って抜…

□阿部和重『プラスティック・ソウル』(講談社)、あとY本さんに教えてもらった、原稿無断流出事件を当事者が書いた、村上春樹「ある編集者の死〜安原顯氏のこと」が載っている『文藝春秋』4月号と『THE HARDCORE ナックルズ』を買った。学生みたいな買い物…

先月、早川への版権移動で(氏の手になる)創元版がいずれ読めなくなるという話(追記:ここは思いちがいで、そこまでは書いてありませんでした)を訳者の山形浩生のウェブ(http://cruel.org/other/rumors.html 2005年11月)で読んで、慌ててディックの『暗…

久世光彦氏逝去の件、その後人づてに聞いたことには、亡くなったことは、森繁氏の体調を配慮して、親族および関係者は事実を伝えない方針だという。「大遺言書」の連載に関しては、久世氏が体調不良にありしばらく取材に来られなくなったと説明するというの…